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SUSTAINABILITY
サステナビリティ

アートを通じて心の傷をケアし、
心の輪を世界中に広げていく

子供地球基金

子供地球基金は、1988年に創設されて以来、病気・戦争・災害などで心に傷を負った世界中の子どもたちへアートを通じた手法で支援を続けています。56カ国にのぼる国々に直接足を運び、子どもたちとコミュニケーションを取りながら、画材や必要物資を提供しアートを通じたワークショップを行う中で、「1日でも早く世界中の子どもたちがのびのびと絵を描ける環境が手に入るようになってほしい」と切望する創設者の鳥居さんにお話を伺いました。

鳥居さんがアートを通じた活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
また、どのように子供地球基金の活動へと広げていったのでしょうか?

ある日、息子が描いた絵のテーマが、“ハッピーバースデー アース”地球にもお誕生日を作って地球が喜ぶものをプレゼントしよう、というもので心に留まったのがきっかけです。息子が考えたことは、自分が誕生日にプレゼントを貰ったら嬉しいから地球もプレゼントを貰ったら嬉しいよね、という単純なものだったかもしれません。ですが、私はハッと気づかされました。子どもの発想や純粋な優しさこそが、社会をよりよく変えていく鍵なんだと。また、息子の幼稚園探しをする中で「子どもがそれぞれに自由に自分のことを表現していける場を作りたい」という思いが強くなり、幼稚園自体を自分で設立しました。

その幼稚園では、日本が恵まれた国であること、子どもたちにも必要としている人に手を差し伸べる意識を持って欲しいという思いから、ゴミ拾いをしたり老人ホームを訪問したりというボランティア活動を行いました。不必要な電気は消して歩くなど、小さなことですが「一日一善」を習慣化したのです。その活動を、設立した幼稚園や日本だけにとどまらず世界に向けた活動へつなげたいという思いから、子供地球基金の活動へと発展していきました。世界にはたくさんの恵まれない子どもたちがいる、そんな子どもたちの未来のために行動したくなったのです。

子供地球基金では、子どもたちの豊かな創造力を育むため、そして困難な状況の中にいる子どもたちに心のケアを提供するため世界中でワークショップを行っています。活動を通して得られた純粋な子どもたちが創り出す素晴らしいアート(絵)が、支援を必要とする子どもの基金となる“Kids Helping Kids(子どもたちが子どもたちを救う)”を目指しています。子どもであっても誰かの役に立つことができるということ、社会とつながっているのだということを意識してもらうきっかけになればと思い、活動を続けてきました。

アートに対しては特別な思いがあったのですか?

子どもの頃の自分自身を振り返ると、すごく内向的な子どもで、お友達ができにくいとても恥ずかしがり屋な性格でした。なのでいつも一人で絵を描いていて、その経験が想像力を育んでいたのではないかと思います。また、母が画家として活動していたことも影響していたかもしれません。

私は、子どもたちには大きな視点を持ち広い視野で育って欲しいと思い、自分の子にも幼稚園の子どもたちにも生きることの大変さや厳しさをしっかりと教えてきました。自分たちが生きているのは社会との関りがあるから、いま世界のどこかで起こっている戦争だってどこかで自分と関りがあるかもしれない、そういう視点で考える子に育ってほしいと活動をしてきました。

活動を通した子どもたちとの関わりで、忘れられない出来事はありますか?

36年間この活動を続けているので、何万人もの子どもたちとの出会いがありました。その中には、現実を疑うほどありえないような、ショッキングなものもあります。チェルノブイリの事故、ベトナム戦争など……挙げればきりがありません。ガザの子どもの支援を行った際には、瓦礫の中に閉じ込められ何時間も耐え抜いた子どももいました。16人の身内が全員亡くなってしまった子どももいました。毎日聞く話が、とても悲惨で、これが現実なのかと毎日驚かされます。

そんな中で行う活動では、子どもたちがこれからどんなふうに生きていくのかということにフォーカスをしています。亡くなったお母さんの絵を描いてくれる子どもがいる一方で、絵すら描きたくないという子もいます。ワークショップをすると沈黙の中で絵を描くことが多くなってしまうからこそ、満面の笑顔で子どもたちに接するように心がけています。すると、だんだん描きたくなって参加してくれることもありました。子どもたちの発揮する集中力はすごくて、何時間も描き続ける子も少なくありません。

また、私たちの活動では子どもたちの絵を分析することはしません。子どもは子どもの力で立ち直っていくからです。描くことがセルフカウンセリングになり、色や形で何かを表現し、自分の身に起きている現実を受け入れていきます。現実を受け止めて、それを明日の力に変えていく。だからこそ、私たちはとにかく笑顔で子どもたちに接し、「明日からは違う日が来る」という希望を伝え続けています。
そうしていくうちに、子どもの絵に変化が起きることがあります。ずっと同じ色で書きなぐりだったものが、次の日はちょっと明るく形があるものを描くようになったりして。感情を吐き出すのは大事なことですが、小さな子どもは吐き出すすべがありません。言葉が出ない子どもは絵で表現するのです。言葉にならない感情を表現するうちに、少しずつ心を開くきっかけとなっていく、そんな姿を目の当たりにすることがあります。

「絵を描くこと」で自分と向き合い、それがさらに他の子どもたちを助けることにつながっていくんですね。

はい。子どもが絵を描き、表現することができれば、それが解決の糸口になっていくと思います。何もモノが無い場所でも、地面に指で絵を描く方法で活動をしてきました。いつでも、どんな環境でも、絵を描くことはできるのです。
子どもが自分自身の力で感情を吐き出して、自力で自分を救っていく…そんな子どもたちが創りだした素晴らしい絵を世界中から集め、その絵が支援を必要とする子どもたちを救う基金となる“Kids Helping Kids(子どもたちが子どもたちを救う)”に繋がっていくことを信じています。

ありがとうございます。
オルビスは、自分で変えることのできない困難な環境の中にある子どもたちを応援し続けることで、子ども自身の喜ぶ姿や持っている力が発揮できる環境を作っていきたいと考えており、ペンギンリング プロジェクトを立ち上げました。
鳥居さんからご覧になって、オルビスのどのような点に共感を持っていただいていますでしょうか?

オルビスの「スマートエイジング」という、「自然な形で自分を大事にする考え方」に共感をしています。絵を描くことはプリミティブ(原始的)な行動ですが、化粧も太古の昔から始まり、プリミティブな行動という共通点があると思います。

子どもが絵を描く時には自然に手が動いていきます。これはすごいことで、小さい頃だけの純粋無垢な感覚、例えるならまるで宇宙と通じている何かがあるように感じることがあります。子どもにはその気持ちをずっと失わないでほしいなと。心の中に小さい花が咲くように、子どもに明るい未来を導くために一緒に活動できればと思います。

最後に、改めて子供地球基金で大事にする考え方と鳥居さんが思い描く未来を、ペンギンリング プロジェクトやオルビスのお客様に向けて教えてください。

同じ地球に生きていることは不思議なことだと思います。地球で起きていることの全てが、自分とも関りがあるかもしれない、ということを忘れずにいて欲しいです。プラスのエネルギーを人に伝えて、小さなことでも役に立つんだということを実感して頂きたい。
子どもの小さなアクションでも信じがたい大きな力になるということを子供地球基金の活動を通して伝え、実現していきたいです。


オルビスが共感した、子供地球基金の活動

子供地球基金がこれまでに行ってきたワークショップは56か国以上、3,500回以上(2024年9月時点)。子どもたちが1日でも早く、のびのびと絵を描けるような世界を目指し、様々な理由で心に傷を負った世界中の子どもたちに物資支援やワークショップを行うだけでなく、精神的なよりどころとなる空間「キッズ・アース・ホーム」をクロアチア、ベトナム、カンボジアなど、世界12箇所に設置しました。
オルビスでは、目を覆いたくなるような惨状の中にまで代表の鳥居さん自ら赴き支援を続ける、そうした思いや子どもたちが子どもたちを救う活動に共感し、子供地球基金に寄せられた子どもの絵を商品デザインとしてコラボレーションし売上の一部を寄付することで、子供地球基金の活動を支援してまいります。

鳥居 晴美 特定非営利活動法人子供地球基金代表

鳥居 晴美

特定非営利活動法人子供地球基金代表

東京都出身。白百合女子大学仏文科卒。自身の息子を入れたいと思える幼稚園がなかったことを機に、表現教育に特化したインターナショナルな幼稚園「ユニダ・インターナショナル」を開校。1988年に同校のボランティア活動から発展した「子供地球基金」を設立。創造力豊かな子どもたちを育むことを目的に、これまでに世界56カ国で3500回を超えるワークショップを行なっている他、病気・戦争・災害などで心に傷を負った子どもたちに画材や医療品など必要な物資を届ける活動を行なっている。活動を通して得られた子どもの絵は企業の商品デザインやカレンダーなどに使われることで基金となり、その基金を世界の子どもたちに還元する「Kids Helping Kids(子どもが子どもを救う」活動は世界的に高く評価され、2018年にノーベル平和賞の候補団体にも選ばれた。