すべての子どもが夢や希望を持てる
社会の実現を目指して
キッズドアは、すべての子どもが夢や希望を持てる社会の実現を目指して、日本国内の子ども支援に特化して活動する認定NPO法人で、2009年の設立以来、経済的な困窮を筆頭に子どもをめぐる社会課題の解決に取り組んでいます。「どんな境遇に生まれても、夢や希望を持って、いきいきと成長できる、子どもの笑顔があふれている」、そんな社会の実現を目指す理事長の渡辺由美子さんにお話を伺いました。
渡辺さんが子どもたちに対して何かできないかと思われた背景に、どんなできごとがあったのでしょうか?
私が社会人になった時代はいわゆる「24時間働けますか」の時代でした。百貨店に勤務し終電で帰る日々を送っていましたが、2児の母となり一度仕事をやめ子育てメインで過ごした時期がありました。その時に感じたのは、子どもの課題と社会がすごく離れているというか、ビジネスの世界と使っている言語がまるで違うように感じたんですよね。
今でこそ「ワンオペ育児」という言葉がありますが、そんな言葉もない時代に子どもと向き合っていると、こんなに社会と断絶されてるのかと思いましたし、周囲の人とも子どもの話しかできないことが当時の自分にとっては違和感でした。ママだけじゃなくて社会全体で子どものことを考えたほうが良いのではないだろうか、社会がこの課題を知らないままに放置していくと絶対にうまくいくとは思えないので、そこをつなげる役目が必要だと思いました。
お子さんが小さい時期に抱かれた思いは、その後どのようにキッズドアの設立へとつながっていったのでしょうか。
夫の仕事の都合で一年間イギリスでの子育て・子どもの通学を経験し、また日本に戻ってきました。その時に自分自身が一番大切にしたいと考えたのが、「社会全体で子どもを育てる」という考え方です。どんな家庭の子どもにも嫌な思いをさせないために、クラスや環境になじめない子がいたとき、子どもに原因があると考えるのではなく受け入れる環境側でできることがある、とイギリス生活で実感しました。だから自分の子どもが通うクラスで少し気になる子がいると放っておけず、自分の家に招いたり、何かしらの方法で居場所を作ってあげたり。どこにも帰属感を持てない子どものために、少しでもホッと一息付ける場所を提供したいという思いがキッズドアでの居場所支援へとつながっています。
キッズドアの設立後、居場所支援や学習支援をする中で、どのような子どもの変化を目の当たりにされましたか?
子どもにとって応援してもらうことってすごく大事で、応援してあげれば子どもは自分で頑張れるんだなと思います。
例えば定期試験の点数が0点の子と話すと、その子は勉強せずに試験に臨んでいるんです。生まれてからずっと「頑張る」という経験が不足している。行きたくないけど習い事を続けて上達して褒められるみたいな経験をしたことがなかったり、嫌なことを我慢してやる経験を持っていない。やった結果が良くなる経験をしていないんです。
だから、「もうちょっとやろうよ、こうやってやればいいんだよ」「やればできるじゃん!」と応援されると、「嫌だけど勉強するとテストの点数って上がるんだ」と気づき、もう少し頑張ろうかなとなる。努力することがどういうことかを伝え、それを応援してもらえると、勉強を続け頑張ることができるんです。
分からないということが恥ずかしくて、でもずっとやらずにいるとコンプレックスになってしまうから、キッズドアではそこも向き合って、本人が自らやるようにするんです。分からないということが言えないままにチャンスを失っている子たちに、「この人だったら分からないと言っても大丈夫、馬鹿にされないんだ」という信頼感を醸成し、応援し続けています。
大事なのは応援、なんですね。
そうです。子どもの立場に立ってずっと応援してあげれば子どもは頑張るので、そこをどうするかなんですよ。大人が無理だよねって言ってしまうとそこで終わってしまうけど、頑張れるよって言ってあげる。みんなが応援しているよってことを示せば、本当に変わっていく。子どもの能力を発揮させていないのは周りの環境だから、そこを応援するとすごくよくなる。キッズドアは最後まで子どもの応援団なんです。
ありがとうございます。
オルビスは、自分で変えることのできない困難な環境の中にある子どもたちを応援し続けることで、子ども自身の喜ぶ姿や持っている力が発揮できる環境を作っていきたいと考えており、ペンギンリング プロジェクトを立ち上げました。
渡辺さんからご覧になって、オルビスのどのような点に共感を持っていただいていますでしょうか?
子どもに対して行うこととお肌を大事にすることって共通点があって、慈しむことって大事ですよね。
子どもは愛情を受ければすくすく育っていきます。そこがお肌やスキンケアと似ていますよね。愛情をかけてただただ大事にする、慈しむことっていいんだなと、改めて思いました。
ぜひみんなで日本の子どもを慈しむことができると、社会を良くしていけると思います。
最後に、改めてキッズドアで大事にする考え方と渡辺さんが思い描く未来を、ペンギンリング プロジェクトやオルビスのお客様に向けて教えてください。
子どもにとって「この人だけは信じてくれる」という人が一人いればいいんです。それは、親子の関係に限らず、みんながなれることです。
「すべての子どもが夢や希望を持てる社会の実現をめざして」この言葉を掲げた15年前はそんなことは無理という機運もありましたが、キッズドア設立から15年経ち社会も変わってきました。今も日本に生まれたどの子も幸せに暮らせるようにということを本気で実現していきたいと思っています。そのためにより多くの人と、自分の子だけじゃなく自分の子以外も、子どもがいない方も、周りにいる子がみんな幸せな方がいい、子どもが愛されながら育っていく社会を作っていきたいです。
オルビスが共感した、キッズドアの活動
キッズドアは、そのビジョンの実現のために子どもへの支援はもちろん、子どもを支援する担い手を増やすことも重視しながら活動されています。学習支援を届けた生徒は年間2,000人以上、開催した学習会は5,900回以上に及びます(2023年度実績)。また学習だけにとどまらず、子どもたちを学校や家庭以外の人的ネットワークにつなげることも欠かせない要素だという観点から居場所支援等も行い、子どもたちが自分の力を発揮できる環境を見つけられる支援を行っています。
オルビスでは、子どもの学習支援や居場所支援に共感し、その活動を支援する寄付をしてまいります。
渡辺 由美子
認定NPO法人キッズドア理事長
一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会副代表理事
千葉大学工学部卒。大手百貨店、出版社を経て、フリーランスのマーケティングプランナーとして活躍。 配偶者の仕事の関係で一年間イギリスに居住し、「社会全体で子どもを育てる」ことを体験する。2007年任意団体キッズドアを立ち上げ、2009年内閣府の認証を受けて特定非営利活動法人キッズドアを設立。子どもへの学習支援や居場所運営に加え、2020年より新型コロナ感染症の影響を受けた日本全国の困窮子育て家庭への支援を開始。日本の全ての子どもが夢や希望を持てる社会を目指し、活動を広げている。内閣府こども家庭庁こども家庭審議会こどもの貧困対策・ひとり親家庭支援部会臨時委員。厚生労働省 社会保障審議会・生活困窮者自立支援及び生活保護部会委員。