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更年期に備える・乗り切る②|更年期症状の原因からひも解く対策とケア法

女性は誰しもが経験する「更年期」。めまいやほてり、痛みなどの不調をただ我慢するのではなく、今は対策やケア法の選択肢が広がりつつあります。大切なのは更年期のメカニズムを知り、ポイントをしっかり押さえたケアをすること。一緒に学び、実践していきましょう。

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お話を伺った先生
小林暁子先生
MD. PhD. 医師・医学博士。小林メディカルクリニック東京理事長・院長。著書「女性の自律神経の乱れは『腸』で整える」(PHP)など、腸と自律神経の関連性を提唱。腸内環境と自律神経を軸に便秘外来、漢方外来、更年期外来、予防医学などの診察を行う。
 

めまい、ほてり、イライラ…。つらさも症状も様々な更年期。
ケアするポイントはどこにある?

膝、肩、腰、指…。身体のほぼ全ての関節に痛みが(涙)。老後が健康に過ごせるのか不安すぎる(59歳)

おしりまで冷えを感じるほど、身体のあちこちが冷えています。それなのに、最近は耳の後ろから汗が伝うほどに頭から汗が…(50歳)

と、感じ方も症状も様々。

エストロゲンが十分に供給されないことが、ホルモンの分泌を司る脳の視床下部、および脳下垂体のパニックを引き起こし、その結果、こういった症状が現れるのです。

身体に起こる自然なこととはいえ、辛い症状には悩まされたくないもの。できることなら、エストロゲンの減少そのものを食い止めたいところですが…。更年期症状とその対策について、「更年期外来」を設けている小林メディカルクリニック東京の小林暁子先生に聞きました。

卵巣が年齢を重ね、エストロゲンが減っていくのは、人間という生き物としての自然な流れ。その流れに抗うことはできませんが、少しでも症状を軽くしたいですよね。その方法を考える上で知っておきたいのは、更年期はエストロゲンの低下が引き金となりますが、めまいやほてりなどの辛い症状は自律神経の乱れが原因、ということです。視床下部はホルモンの分泌の他、自律神経のコントロールも担っています。ですので、視床下部がパニックを起こすことで自律神経が乱れてしまい、めまいやほてり、イライラ、動悸など、幅広い自律神経症状が出てしまう。つまり、更年期症状をケアする方向性は:

①減少したエストロゲンを補う
②自律神経を整える

という2つが考えられます。

ケア法① 低下した女性ホルモンの働きをカバーする

まず考えられるのが、卵巣が分泌するエストロゲン量では足りない分を、他の何かで補う方法。

その最たる例がエストロゲンの補充療法です。そこまでしない場合でも、お薬や漢方の他、今ではエストロゲンに似た働きが期待できるという成分の摂取をおすすめする医療機関もあります。

\ケア法メモ 女性ホルモンに似た働きをする代表格・大豆イソフラボン/

エストロゲンのような働きをしてくれる成分として有名なのが、「大豆イソフラボン」。そして「イソフラボン」とは大豆に含まれるポリフェノールの一種。大豆製品を食べたのち腸内細菌の働きにより、この「イソフラボン」からエストロゲンに似た働きをする3種類の代謝産物が作られる。

この3種の代謝産物が「ゲニステイン」、「ダイゼイン」、「グリシテイン」。この3種のうち「ゲニステイン」が最もエストロゲンに似た作用を持ち、「ダイゼイン」、「グリシテイン」の順に続くことが判明。最近よく耳にする「エクオール」は「ダイゼイン」が代謝されてできるもの。つまり、大豆イソフラボンには女性の身体に嬉しい働きをしてくれるものが複数含まれているということ。

ケア法② 乱れた自律神経を“腸”からいたわる

自律神経を整える方法として、「意識してまず取り組んで欲しい」と小林先生が挙げるのは「腸内環境を整える」こと。これまで20万人近くにのぼる更年期世代の患者さんとの診察の中で、腸内環境が良くなることにより更年期症状が緩やかになったというケースを多く見てきたそう。

腸と脳の関連性は現在も研究が進められている注目の分野です。私たちの生命活動に欠かせない脳と腸は密接に影響を及ぼし合っていることを意味する「脳腸相関」という言葉もあります。例えば、“幸せホルモン”といわれる「セロトニン」は、脳だけに存在している印象があるかもしれませんが、実はその大部分が腸で作られ、腸にも存在しています。腸で作られたセロトニンが脳に運ばれるわけではないけれど、オーケストラのように、腸のセロトニンが音を出せば脳のセロトニンも反応し、影響し合っているのではないかと言われています。

ストレスを感じるといつもお腹の調子が悪くなる…という声があるように、脳のストレスは腸に反映され、腸の不調は脳に反映される可能性が。小林先生自身も、のべ20万人近くの患者さんと向き合う中、腸内環境を良くすることで更年期世代が訴える症状が穏やかになったというケースを見てきたそう。

私はもともと更年期を専門に診ていたわけではありませんが、内科や「便秘外来」等で更年期世代の患者さんに腸活に取り組んでいただいたところ、更年期症状が和らいだという声を多く聞いてきました。更年期に感じる辛さが自律神経症状である以上、腸内環境の改善に手をつければ良くなるのではないかと私なりに考え、患者さんたちと取り組み続け、今、成果を感じてきているところです。具体的には、食物繊維、発酵食品といった、腸にいる良い細菌を増やし、腸内環境を良好にしてくれるものを食べることをアドバイスしています。

\ケア法メモ 腸にいいもの/

食物繊維 … 人の消化酵素では消化できないため、大腸内で発酵・分解されると善玉菌が増えて腸内環境が改善。玄米やごぼう、大豆など、水に溶けない「不溶性食物繊維」と、大麦や昆布、りんごなど、胃腸内で水に溶けゼリー状になる「水溶性食物繊維」の2種類に分かれる。

発酵食品 … 酵母やカビなどの微生物により、食材の栄養価等が高められたもの。乳酸菌や納豆菌などの善玉菌が多く含まれることから、腸内フローラのバランスを整える働きを持つ。ヨーグルトやチーズ、味噌、納豆、キムチなど。

その他、腸内細菌をサポートするお役立ち成分… 腸内細菌の餌になるオリゴ糖、乳酸菌の他、腸内細菌の働きをサポートするビタミンB1、B3、Dなどの栄養素をダイレクトに摂るのも手。最近では、オリゴ糖の一種・ラクトビオン酸に加え、ユーグレナにも注目が集まっている。ユーグレナはパラミロンという食物繊維やビタミン、アミノ酸等の栄養素を含む微生物。腸の健康維持にパワフルに働き、自律神経にも働きかけると言われている。

理想の腸内環境は、いろんな種類の善玉菌がたくさんいること。腸も“多様性”が大事なんです。ですので、何か特定のものだけを摂るというよりは、いろんな種類の食物繊維や善玉菌を摂ることがベスト。人の腸内環境は生まれた時に母親からもらった菌から始まりますが、今まで食べてきた食事や生活習慣の影響で変わり続けます。今からでも少しずつ、腸内フローラの多様性を増やしていただきたいです。

更年期といい距離感で付き合っていくために

誰しもが経験する更年期。婦人科の他、「更年期外来」を常設する医院も増え、対処法など様々提案されるようになった今は、“我慢せず、能動的にケアしていく時代”。それならば、食生活や生活習慣からのアプローチなど、あらゆる方法を試していきたいもの。

加えて、周りの理解、サポートを求めていくのも大事だと思います。更年期世代の患者さんの話を聞くと、イライラして家族や仕事仲間に当たってしまったことを後悔して、落ち込んでしまう方が多くいらっしゃいます。不調を隠そうとしたり、乗り越えなきゃとご自身にプレッシャーをかけたりするのではなく、「最近、更年期の症状かもしれないけれど、気持ちにアップダウンがあってごめんなさいね」、「今日はちょっと調子が悪くて」など、先に言える環境を作っておけると、ご自身はもちろん、周りの方にとってもプラスに働きます。それに今では、更年期についてオープンに話せるようになりました。同世代や先輩世代の方々と話をするのもいいでしょう。そういった意味でも、更年期に振り回されるのではなく自分から先回りして、能動的に対処していけるといいですよね。
監修/小林暁子
編集/間野加菜代(Cumu)
イラスト/ハルペイ

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