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更年期に備える・乗り切る①|そのとき、身体で何が起こってる?みんなの“あるある”エピソードも

女性は誰しもが経験する「更年期」。みんなが通る道とはいえ、その感じ方、経験する身体の変化には個人差がかなりあるといいます。一見、無関係に思える腰の痛みが実は更年期症状だったということも。今一度立ち止まって、更年期のメカニズム、症状など、基本的な知識をおさらいしてみませんか。

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お話を伺った先生
小林暁子先生
MD. PhD. 医師・医学博士。小林メディカルクリニック東京理事長・院長。著書「女性の自律神経の乱れは『腸』で整える」(PHP)など、腸と自律神経の関連性を提唱。腸内環境と自律神経を軸に便秘外来、漢方外来、更年期外来、予防医学などの診察を行う。
 

100人いれば、100通りの更年期症状がある!?

30代後半から増え始め、40代半ばから50代前半にかけて経験する人の数がピークを迎える更年期。「更年期」と一口に言っても、その実情は本当に人それぞれ。みなさんが実際に感じている症状を聞いてみると…。
\私の更年期こんな症状に振り回されてます/

関節の痛みから冷え、のぼせ、動悸、メンタルの不調など、全身のあちこちに現れる更年期の症状。なぜこんなにも多岐に渡るのか、小林メディカルクリニック東京の「更年期外来」で、数多くの方たちを診察してきた小林暁子先生に聞きました。

更年期の症状は、自律神経症状といえます。自律神経とは、呼吸、体温、血圧、心拍、消化、代謝など、基本的な生命活動を維持する機能を担うもの。カバーする領域が幅広い分、自律神経に乱れが起き症状が出る時の範囲も膨大です。あらゆる症状が出る可能性がありますが、私たちの身体が一人ひとり違うように、更年期の症状にもかなりの個人差があるのが特徴。私が診てきた経験から思うに、その人が気にしている部分・体の中でも弱くなっている部分に症状が出やすい印象です。また、お母様が訴えていた更年期症状をご自身も経験されるという家族性の症状の場合もあります。

辛い症状が出るほど、自律神経が乱れるのはなぜ?

自律神経がカギとなる更年期の症状。ストレスや生活習慣の乱れ、気温の高低差など、自律神経を乱す要因に10代の頃からさらされ続けてきたはずなのに、更年期になるとなぜここまで自律神経が乱れてしまうのでしょうか。

その原因は、分泌される女性ホルモン・エストロゲンの減少にあります。性的に成熟した時から定期的にエストロゲンが分泌されている状況から、年齢を重ねたことにより、卵巣からエストロゲンの分泌が徐々に減っていくのです。その変化を、脳の直下にあり様々なホルモンを分泌するよう命令を出す脳の視床下部、および脳下垂体が察知し、卵巣に向けて「もうちょっと、エストロゲンを分泌してね」と命令するホルモンを出します。でも、年齢を重ねた卵巣では、上手くエストロゲンを分泌できません。
卵巣から「エストロゲンを分泌したよ」というフィードバックが戻ってこないため、視床下部と脳下垂体は分泌するようさらに命令を出しますが、それでもフィードバックが戻ってこない。そうなると、この2つがパニックを起こして、さらに分泌の命令を過剰なほどに出します。特にこの視床下部は自律神経をコントロールする働きをしていますから、エストロゲンが分泌されないことによる今までにないパニックが、自律神経の激しい乱れに繋がっていくというわけです。

“更年期による自律神経の乱れ”は病気ではないけれど…、受診する方がいい?

動悸やめまいなどを感じても、そもそも更年期は人体に起こる自然現象。病気ではないことを思うと、病院を受診してもいいのか、受診した方がいい場合はあるのか、気になるところ。

いわゆる「更年期障害」と言われる、更年期による症状が強くて生活が過度に妨げられている状態ですと、治療を要することになります。ただ、「生活が過度に妨げられている状態」の判断は人それぞれですし、辛さの感じ方も人によって違います。私個人としては、もしお悩みの症状が頭の中を占めてしまい、仕事やご家族との時間に集中ができないと思った時点で、更年期外来や婦人科に行かれるのがおすすめです。もし近くに更年期を診てくれる病院がない場合は、内科や総合診療の病院でも良いと思いますよ。

症状の中では特に、気分の激しい落ち込みに悩んでいる場合は早めの受診をしていただきたいです。食欲がないなど、生きていく上での大事な欲求が落ちている感じがするなら内科でも婦人科でも、総合的に見てくれるようなところで指示を仰ぎましょう。

症状は全身、多岐に渡るからこそ、不調は全て「更年期」と片づけてしまいがちになるのも要注意。その中に、実は更年期症状ではないものが混じっている可能性も。
更年期症状だと思っていて、全然違う疾患の場合もあります。また、更年期に伴って血圧が上がったり、心臓系の病気を発症したりする方もいらっしゃいますから、不調が2、3ヶ月続くようでしたら、医療機関に相談していただく方が、のちのち後悔しないのではと思います。
\更年期…じゃない疾患には、こんなものが/

□心臓弁膜症 … 心臓の弁に障害が起きた状態。心臓への負担が大きくなると、息切れ、動悸、ふらつきなどの症状を感じる。

□関節リウマチ … 免疫の異常により、主に手足の関節が炎症を起こす。手指のこわばりや関節の痛みを感じる。

□甲状腺機能障害 … 甲状腺の働きが低下、または過剰になることで、甲状腺ホルモンの分泌量に異常が生じる。疲れやすさ、むくみ、動悸、手指の震え、暑がりなど、様々な症状が出る。

病院に行くほどでもないのであれば、セルフケアを始めてみましょう。服用するものから生活習慣、食習慣の改善など、方法は様々ありますよ。

生活習慣の改善、健康維持。更年期症状のためにできること

市販薬以外にも、生活習慣の改善など、今ではいろんなケア法が選べるように。
原因がエストロゲンの低下であることを考えると、女性ホルモンを補うというケアはもちろん良いでしょう。ですが、自律神経が乱れることで起きる症状ですから、自律神経を乱す要因をできるだけ減らし、整えるサポートをする、というケアもとても大切です。
加えて、自律神経の乱れは年齢に関わらず起こるもの。まだ20代、30代の方でも、ストレス等が原因で、更年期に似た症状を感じることもあります。加えて、今は自覚症状がないとしても、早めにケアを始めておくことで更年期に入った際にソフトランディングできるようになります。更年期世代ではない方はエストロゲンが本格的に減り始める前のプレケアとして、更年期世代の方は今の症状を和らげるケアとして、今からできることを始めていきましょう。

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監修/小林暁子
編集/間野加菜代(Cumu)
イラスト/ハルペイ

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