疲れているのに、眠れないのはなぜ？｜なんでも相談室「今日はどうされましたか？」#10

清水そもそも、人はどうして眠れなくなるんでしょうか？カフェインの摂りすぎが原因か、それとも、眠る前にスマホからブルーライトを浴びているのが原因か…。

井上眠れない原因がどこにあるのかは、実はいくつかのパターンに分けることができます。例えば、カフェインとブルーライトは毎日の習慣に原因があるケース。また、眠るには周囲が明るい、枕が体に合っていない、など、環境に原因があるケースもありますね。

清水なるほど。部屋が暑すぎたり、寒すぎたりするのも、環境に含まれますね。あとは、家族のいびきも…。母から、いびきのうるさい父と別の部屋で寝たら睡眠の質が上がったと聞いたことがあります（笑）。

井上他には、痛みや痒みなど体の状態に原因があるケースもあるでしょう。熟睡できないのなら、習慣や環境、体の状態などに一度、目を向けてみるといいと思いますよ。

清水でも先生、先週は問題なく眠れていたのに、今週は全然眠れない…！なんてことが起きるのはなぜですか？習慣や環境に変化はないのに、日によって眠れなくなるんです。

井上そうですね…。その場合は心の状態に原因があるのかもしれません。不安や恐怖、プレッシャー、孤独など、様々な感情からくるストレスに反応しているのではないでしょうか。産業医として不眠の相談を受ける中でも、ストレスが原因という方は多いですよ。

井上人はストレスを感じると、緊張状態に陥ります。緊張状態により影響を受けるのは自律神経。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、この緊張で刺激を受けるのは交感神経の方です。

清水たしか、交感神経を自動車に例えると“アクセル”、副交感神経は“ブレーキ”と聞いたことがありますね…。

井上その通り。交感神経と副交感神経はシーソーのようにバランスを取りながら存在していますが、交感神経が優位になれば、脳が興奮して“頑張るモード”になりますし、副交感神経が優位になれば、人は“リラックスモード”に入ると言われています。

清水と、いうことは、眠る時は副交感神経が優位になるのが理想なのに、ストレスが交感神経を刺激してしまうと、理想とは真逆の状態になってしまう…！？

井上そうなんですよ。とはいえ、交感神経が優位になっている状態から、すぐに副交感神経を優位にするというのはなかなか難しいので…。眠れないと相談に来られる方には、「布団に入って30分経っても寝つける様子がなければ、布団から出ましょう」とお伝えしています。

清水え！？逆効果じゃないですか？

井上まずは布団という場所が、「眠れるのかな」と不安を感じる場所ではなく、「寝る場所だ」と脳に認識させ続けることが大切なんです。なので、布団の中でモヤモヤし続けるよりは布団から出て、自分がリラックスできることをやるのがおすすめですよ。

井上布団から出たあとは、いかに副交感神経を刺激するかが眠りに落ちるポイントです。

清水温かい飲み物とか、音楽とか…。マイリラックス法を実践したいですね。

井上意外とおすすめなのは、ちょっと難しめの本を読むこと。脳を守るための防衛反応の一種として、退屈が眠気を誘います。なので、退屈であればあるほどいいです（笑）。

清水副交感神経を刺激する以外にも、何かいい方法はありますか？例えば、眠れなかった夜の翌日こそぐっすり眠るために、日中からできることはあるのでしょうか。

井上眠気を誘うホルモンのメラトニンをコントロールすること。まずは起床してすぐ、顔いっぱいに朝日を浴びます。そうすることで朝が来たことが脳に伝わり、その約14時間後にメラトニンが分泌され、人は眠気を感じると言われていますよ。

清水夜にメラトニンが分泌されるよう、朝から仕込むんですね。なるほど。

井上あとは、昼間には歯を磨くこと。日中、寝不足で眠たくなると思うのですが、ここで20分以上の昼寝をしないことが肝心。歯茎を刺激するとメラトニンの分泌が減るというのがわかっているので、昼の睡魔に負けないためにもここで眠気をコントロールしておきましょう。

清水いろいろ試してはみたけれど、それでも眠れるかどうか不安…という場合はどうしたらいいのでしょうか。

井上できる範囲で寝るくらいの気持ちでいてほしいなと思います。それこそ一日ではなく一週間のスパンで睡眠時間を調整するでもいいですし、深い睡眠に必ず1回は入ると言われる4時間の睡眠だけでも取れればOK、と気持ちを切り替えられるといいですね。

清水「寝なきゃ」と自分にプレッシャーをかけないでいることが大切なんですね。

井上そうですね。熟睡するための準備はしつつ、眠たくなったら布団に入る、無理せず眠る、を繰り返していれば、自然と眠りの習慣が整っていきますよ。